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雨あがりの街で、いつかまた出会える

とても強い横なぐりの雨が路面を叩いていました。

大粒の雨で周囲が白く煙り、折りたたみの小さな傘がすでに役に立たなくなっています。

午後からゲリラ豪雨になるかもしれない。そういえば天気予報でそんなことをいってた。ずぶ濡れになって、この沈んだ気持ちを全て洗い流したい。ユリさんは、風で飛ばされそうな傘をいっそ放り投げたい気分でした。

2年間ずっと思いを寄せていたA君にふられ、手痛い思いを引きずりながらの帰途でした。

大学の旅行サークルで知り合ったA君はユリさんの一つ年上の先輩で、いろいろなことに親身に相談に乗ってくれる、とてもやさしい人でした。もちろん、ユリさんの一方的な片思いです。しかし、そのつのる思いをA君に打ち明けたとき、「君には興味はない」とあっさりふられてしまいました。

初めて心から好きになった人。

雨で濡れたユリさんの頬を幾筋もの涙が伝います。

高校時代、ユリさんは男子から声をかけられることがよくありました。

そんな、言い寄ってくる男子をふったことはあっても、自らがふられた経験はユリさんにはありません。ですから、そうした感情をどう処理すればいいのか全くわかりません。

1週間ほど大学を休み、アパートにこもりっきりで、食事もほとんどとらず、ぼんやりと無為な日々を過ごしました。

友人からの電話に出るのも億劫で、メールも何日も放置したままでいました。食欲もなく、始終身体はだるく、このまま廃人になるかもしれない、そんな思いが常に頭をよぎりました。

こんな辛い思いをするなら、もう二度と人を好きになんかなりたくない。誰も好きになんかなりたくない。A君への憎しみの感情さえも湧きかねませんでした。

ユリさんは膨れ上がる感情を手当たり次第ノートに書きなぐり、それを引きちぎってはゴミ箱に放り投げました。そんなことを何度繰り返したことでしょう。



その日も、雨が中空で激しく舞い、路面のそこかしこに丸い歪みを作っていました。

ふらつく足元を気にしながら、ユリさんは何日かぶりに大学に向かいました。授業中、やつれたユリさんを見て、大丈夫なの、ご飯たべてるのと奇異な目で話かけてくる友人もいました。

ユリさんは相変わらず失恋の憂鬱な気分を抱えたままで、心の傷はなかなか癒えませんでした。

帰宅途中、何か刺激的な映画を観て、気を晴らそうか、とユリさんはレンタルビデオ店に立ち寄りました。

いつもは恋愛ものを手に取っていましたが、とてもそんな気分にはなりません。あえて、ふだんあまりみないバイオレンスものを借りることにしました。

帰宅し、さっそくDVDを鑑賞しました。一時期話題になった凄惨なサイコ映画です。主人公の女性を窮地に追い込む男性がハマり役で、女性を最後まで執拗に痛めつけ、ついに女性は精神を病み、死の間際まで追い込まれます。

こんなことが現実に起きたらどうしよう。私だったら耐えられない。自死するかもしれない。観るんじゃなかった。ユリさんはDVDを借りたことを後悔しました。

収録されている映画のメイキングにも目を通しました。驚いたことに、主人公の女性と敵方の男性が微笑みながら収録の裏話をくったくなく話しています。映画からはとても想像できないほど男性は主人公の女性に敬意を払い親し気に談笑しています。

2人ともまるで気心の知れた恋人同士のようです。筋立てをすでに分かっている男女がけれん味もなくそれぞれの役回りを演じきって、プロの役者の演技にただ感嘆させられるばかりです。

映画を見終え、睡魔に襲われたユリさんは、そのままベッドに横たわりました。



そして、夢をみました。とても鮮明な夢でした。

夢の中で、A君がユリさんににこやかに語りかけています。

申しわけないけど、僕は君を悲しみのどん底に突き落とすかもしれない。とても酷い仕打ちをするかもしれない。

でもそれは生まれる前に君と僕との間で交わしたことだから・・君はそういう辛い思いをして自分の魂を磨きたい、とても辛いことだけどそういう経験が私には必要なのっていってたね。

だから僕は君との約束を忠実に果たそうと思う。でも君はその深い悲しみからちゃんと立ち直る。人を好きになることに臆病にならない人間になることを学んでね。そして、いつか・・・

夢の中でユリさんはA君の言葉に一つ一つうなずいています。そして、A君が最後に何か言おうとした時、ユリさんは夢から目覚めました。



とても不思議な夢でした。ただ、身体から重い淀みのようなものが取り払われ、心はとても軽やかでした。

最後にA君がいっていた言葉・・・。
「いつか・・」、その後の言葉がユリさんには中々思い出せません。

外はすでに日暮れ、すっかり雨もあがっていました。

ユリさんはレンタルビデオ店に行き、借りたDVDを返却すると、店の前にあったイスに座り、しばらく澄み切った夕暮れの空を眺め、雲を追いかけました。

あの夢は一体なんだったんだろう。

A君が夢の中で最後にいっていた、あの「いつか・・」という言葉。あの後、A君は何を言おうとしたんだろう。

君が、人を好きになることに臆病にならない人間になることを学んだ時に・・。

いつか、僕たちは再び出会う時がくるかも知れない。

そんなことを言いたかったのでは。そうユリさんは感じました。



それからほどなくして、あの映画で共演していた男女の俳優が婚約したという話をユリさんは耳にしました。


この作品はフィクションであり、 実在の人物・団体・事件などとは一切関係ありません。

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